創作/崩壊星<コラプサー>からの挑戦

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コラプサーからの挑戦

このところ僕も時間を持て余してばかりいた。

初めて上陸する大衛星群からの仕事の依頼を受け、心躍らせて母星を飛び出した一週間前が嘘のようだ。僕が目指している星雲への旅路は思っていたよりずっと長く、大半はこの銀色に光る小さなジュラルミン宇宙機との戯れなのだ。
ひとつ大きなあくびをすると、僕はテレビジョンに手を伸ばしてチャンネルを回した。チルチルとミチルは僕の頭から不機嫌そうに尾を突き出していたが、週にいっぺんの狐と狼の人形劇が始まると、そのヤマブドウの瞳をまん丸にして画面に見つめ入った。
ブラウン管の明滅は僕を夢心地にさせ、柔らかい眠りへ誘おうとしていた。瞼の裏に色とりどりの火花が輝き始め、古い記憶の湖がたゆたい始める、その時だった。
突然、ブラウン管が砂嵐に覆われ、激しいモスキート音を放ち始めた。
「速報です、速報です、緊急、キンキュウ―っ」
テレビジョンが抑揚のない声で叫ぶや否や、画面は爆音とともに粉々に砕け散った。
僕は肝を潰して椅子ごとひっくり返り、逆さまの世界でチルチルとミチルがあわてふためき飛びまわっているのが見えた。焦げた新聞の紙片が煙に巻きあげられ、焼け切れた銅線からはネオンのような火花がチラチラと弾けた。

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2016.12.29発行
Photo:まえかわ
Novel:古見もとじ

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