創作/六月十日


「さっきの手紙のご用事なぁに」

あぁ、またこの白封筒だ。
一ヶ月に一度、正確に届けられ、それで僕は日付を知るようなものだ。

どうせ中身は長ったらしいやつだろう。


いつも僕は、この手紙に返信することができない。
開封することすらない時もある。
無視しているわけじゃあないんだ。
だけどいつだってそれは季節の移ろいに想いを馳せるところから始まって、
僕を気遣う言葉で終わると決まっている。

こんなどうしようもない僕を。


封筒の白は、一度だけ訪れたあの部屋の壁紙に似ていて、消毒液のにおいを思い出させ、
並ぶ文字と言葉は美しく整っていて、その丁寧に整頓された思いやりに眩暈と吐き気がしてくるのだ。


筆を取る努力はしている。
けれども僕から伝えたいことなんてやっぱり何も無いし、切手の貼り方すらわからない。


そうしてまた一ヶ月が過ぎ、白封筒が届き、僕の髪は少し伸びる。


お元気ですか、なんて書いたって仕方ないじゃないか。


だってもうすぐ君は、手紙なんて永遠に書けなくなるんだろう。

***
Photo:たから

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