【告知】創作小説+写真集「虚東区六丁目.」

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虚東区六丁目.

小説20P+写真集24P/A5/1000円
写真集フルカラー、装丁特殊仕様

【頒布予定イベント】

2017.12.29 C93 1日目 東む-12a(透明404)

小説:古見もとじ 写真:きりん 被写体/編集:卯月 

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(抜粋1)
十四度目の発車ベルがかすかに浮遊する。それは遠い、はるか対岸に向けられた警告のようだ。
僕は高架下の真新しいゲ ート前で溜め息をついた。
「また間に合わなかった」
都市の呼気を飲み込んだ空が、灰白色に蠢く。身を裂くような乾いた風が、人影の無さを浮き彫りにする。
僕には、今がいったい何月何日の何時なのか、もはや分からなくなっていた。
「次の発車はいつなんだい」
僕が鞄を下ろしてミネラルウォーターを取り出すと、『ソレ』は応えた。
『君が駅に居ない時さ』
頭がどうにかなりそうだった。

(抜粋2)
この街を覆い尽くす新しい鉄材と、セメントと、それを束ねる幾何の集積は、僕の記憶のどこにでもあるようでどこにもない。
幼い頃に見た見知らぬ街なのか、それとも夢の断片か。虚空の中の郷愁が、僕の心臓を覆い始めた。
ソレの声を聴きながら、僕は人気のない海を阻む柵沿いに、脱出口を求めて歩き出した。
『有機種にそっくりな無機種の街。まるであべこべみたいな街』
意識の中で響く声に、僕は首をひねった。
「そっくりな無機種というのは、あのタワーのことかい?まるで全然僕なんかと違うじゃないか」
僕の言葉に、ソレは押し黙った。
「だって僕は、人間なんだから」
そう付言しながらも、慰めを失った冷たい風の中で、不可思議な存在と会話を繰り広げている僕は、
自分が何者なのか自信が無くなっているような気がした。
『でも』
ソレが食い下がる。
『意思のある無機種を見たのは、初めてなんですもの』

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